エリック・カールが天に召された。あのあおむしはしかけ絵本になるわ、CDになるわ、お遊戯になるわ、タオルになるわで、それはそれは影響力のでかい絵本だった。なかなか愛嬌のあるあおむしで、皆に好かれた。実際のあおむしを見たら逃げまくる人が多いのに、妙な話だ。
はらぺこだか何だか知らない、スモモを食べようがペロペロキャンディーを食べようが別に構いやしない。しかし、イチゴを食べるのは心情的に実に複雑だ。今どきICカードが使えず、整理券を取らなきゃならないバスに乗った時の心境と同じくらい。
というのも、大事に育てていた我が家のイチゴがしこたま穴あきにされたからだ。しこたまなんて普段使わないが、敢えてここで使わせてもらおう、しこたまだ。だがしかし、食ったのはあおむしではない。ナメクジとダンゴムシだ。故に、あおむしに罪はないし、濡れ衣には違いない。それでも、はらぺこあおむしの絵本にはいささかの心痛を私は禁じ得ない。
勿論、ナメクジとダンゴムシへの憎悪は余りある。奴らもはらぺこかどうかは知らない。どちらでもいい。だが、美しき蝶にも成りはしないのに、イチゴに穴あけるっちゅうのは詮無いじゃないか、と。

そんなダンゴムシ、春を過ぎるとなかなかの発生量である。冷静に観察すれば、世の中にこんなにダンゴムシがいるのか、と。キンダーブックのしぜんにも出てくるくらいだから、まあまあメジャーな存在。また、その絵本に感化されたのか、我が家の娘たち(monmonとrinrin)が、ダンゴムシを虫かごで飼おうと。バッタにはビビるのに、動きのどん鈍いダンゴムシは自由に掴めるようになったのだ。丸まるのがいいらしい。そう言えば、昔の自分もそうだった気がする。
当然、丸まりはしないワラジムシの方には目もくれない。一見、丸まることのできるダンゴムシの方が生存能力が高いように思えるのだが、丸まらないが故に彼らにとって無節操な神クラスとも言える人間から完全無視されることを考えれば、対人類としては生存能力の高いのはむしろワラジムシかもしれない。
などと私が夢想していることは露程も気にかけず、我が子らはせっせとダンゴムシを虫かごの中へ入れていた。そして、一度落ち葉を入れたっきりそのままで、やがてゴビ砂漠のような乾燥地獄になっていた。もうカラッカラ。ああ、なんて無慈悲な……。しかしまあ、ダンゴムシには穴あきイチゴの恨みがあるしな。

見事に開いたイチゴの穴を/塞げるものなら塞ぎたい