昔、銭湯によくみかん水が置いてあった。子供心にしてなんて今一つな飲み物なんだと思ったことを痛烈に覚えている。さもありなん、古い古い時代からある飲み物らしい。好きな人もいるのであれだが、いやほんまに今一つだ。そして、果汁もなく、もう言ってみればハリウッドで実写化されたアニメのごとく、みかん要素は限りなく薄い。みかん犬でも興味を示さないんじゃないかと。
みかん犬とは? 猟犬とか牧羊犬とかはあるが、みかん犬なんてものは、ない。ないが、我が家のトイプーはもはやみかん犬以外の何者でもないような気がする。それほど、みかんを愛している。桃源郷にたわわに実る桃かと見紛うばかりの食いつきっぷりだ。前世は仙人なんじゃないかと思う。退行催眠してもらって、前世を是非聞いてみたい。もっとも「ワワワン、ワワン」と語られても、何のことやらさっぱりだが……。

仙人は空を飛べるだろうからいいが(知らんけど)、人間には重力の軛(くびき)がある。久々に「斜めの家」のアトラクションに行った。18度傾いているらしい。目からの情報と重力の差が三半規管をいかんなく混乱させる。カンフー使いでなくても、何だか無性に壁で三角飛びをしたくなる。それくらい、壁に吸い寄せられる気分。相撲取りなら、壁に張り付いたまま、部屋から出られないんじゃないかと思う。まあ、まず最初に部屋の扉から入れたらの話だが……。
壁際のたった数段階段も私には全然上れない。しかし、我が子らは違った。割りとすんなり上れはった。大人とはかくも重力差とモーメントの差があるものなのか。いささか、悔しい。子どもたちは喜んでいたけれども。ちょっとうち、トリックハウス的な体験多め。

そんな秋ならではなのか何なのかよくわからない日々を過ごしながら、絵本。図書館から『絵本 御伽草子 付喪神(著: 町田 康、石黒 亜矢子、出版社: 講談社)』を借りてきた。うーん、面白いけれども、さっぱり読み聞かせられる内容じゃなかった。漢字多いし、町田節だし、お下品なとこあるし。まあ、確かに絵本コーナーにあったわけではないんだけれども。大人の絵本、いやこの表現も駄目だな、うん、難しい。
パートナーtantanと次女rinrinは『ホラーめし―ハロウィン ヴィジュアル レシピブック (主婦の友生活シリーズ)』を借りていた。絵本ではないという前に、もはや食欲をなくすリアルさだった。やるのか、本気でやるのか?

壁際のタイタニック