次女たる我が家のrinrinは、何を隠そう、何も隠さないが、太陽の塔を気に入っている。どこか琴線に触れるところがあるのか、前世で深い因縁でもあるのかは知らないが……。もしかしたら、岡本太郎の芸術性を5歳の身の上で認知できているのかもしれない。突然、絵本は爆発だ!とか言われても困るけど。
私にとってはどうも太陽の塔は浦沢直樹さんの漫画『20世紀少年』を思い出してならない。そしてその中で広がる昭和のノルタルジックな風景。が、その懐かしい町並み、私にとってすら古過ぎる。残滓のようなものはあれど、実際にはちゃんと見たことがない。言わばオーバーノスタルジーなのだ。ましてや、rinrinから見れば、太陽の塔なんて五重塔とあまり変わらない古代建築物だろう。
でも、懐かしき駄菓子屋なんかは遥か時代を越えて、永遠に残ってもいいと思う。ああ、あと銭湯も。まあ、全然関係ない話だけど。

それはさておき、我々は平日のUSJに乗り込んだ。梅雨の最中を力業で切り裂いたかのように、雨は来なかった、が、全く空いてなかった。しかも、半数は外国人のようだ。もっとも個人的にはその方が異国情緒がより出ていて好きなんだが。しかし、我が子らにはんなことは関係ない。またも並び待ちという苦行だった。これが平民の限界なのか……。

目当てはマリオワールドだ。いや、確かに異世界のようだった。とにかく人がわんさかいた。もしも昭和のテレビゲーム機なら、処理落ちで人々が点滅したり、カクカク動いていたことだろう。でも現実世界は皆滑らかに動いて……ひしめき合っていた。
近くにいた見知らぬ子供がそのワールドを一望して一言「めっちゃリアルやん!」と叫んだ。うーん、リアルって一体何?

正直、ちょいと疲れた。中年には体力が追いつかない世界だった。主人公がおっさんのワールドなのに。そうしたら「マリオは25歳くらいやで」と他の子供が教えてくれた。ああ……そうですか。口髭濃過ぎんぞ、25歳。

そして、USJの真ん中に立ってみた。アメ車の止まったカフェだかレストラン、古い港町、アベニュー……。ここにも何故か懐かしいオーバーノスタルジーがあった。今や原色のアニメ連中に囲まれた、時間の止まった町だが。
「USJ、うっかりすっかりじぇじぇじぇ、かな」
軽いノスタルジックなワードが五七五調で脳に閃光する。

長女monmonと次女rinrinはUSJを楽しんだとも言え、楽しみ切れなかったとも言え。子供にも長時間の待ちはやはりしんどい。もっといっぱいやりたいが時間が足りない。そのやり残し感を胸に、またいつか行くことになるんだろう。

そして最後に、絵本。rinrinが図書館から借りてきたのは『ちらかしさんとおかたしさん(作:ふしみ みさを、絵:ポール・コックス、出版社:教育画劇)』だ。このテイストと絵柄、彼女は楽しめたのかどうなのか、訊くのをすっかり忘れた。まあ、怒らない、怒る必要がない人生っては大事なのかもしれない。

暗雲立ち込めるワールド。ちょっとクレーン邪魔。