8ビットギャラリー:『快傑 赤ずきんちゃん』
8ビットギャラリー:『快傑 赤ずきんちゃん』

素晴らしいデジタル絵本にまだ出会えていない。もし、良いのがあったら是非に教えて欲しいと思っています。
とは言いながら、こんなデジタル絵本はどうか、という妄想はあります。と言っても、ストーリーや内容ではなく、技巧の話ですが。

まず、ページをめくる、という動作を拡張してみたいです。右に、左に、上に、下に自由にページをめくることができる。どこにめくっても次のページが開く、というのも良いけれど、めくる方向で内容が変わるともっと面白い。
右上上左と左上右上では、同じページに着くんだけど、そこまでのストーリーは違う。そして、いろんな方向の先にいろんな物語の終わりがあるのです。
ただ、ページ数が膨大になるのと、ストーリーの整合性を取るのが難しいというところが難点ですね。

それから、音。デジタル絵本は音を出せるのがとても強味だと思います。が、ありきたりのBGMや動物の鳴き声、朗読ではもったいない。代用も効くし。あまり耳にしない音がいいですね。遠吠えとか、遠くの汽笛とか、虫の音とか、密林の奥の音とか(どんな音かは知らないが……)、モグラのおならとか(存在するのかは知らないが……)。あるいはいろんな珍しい楽器の音とか、世界の民族音楽とか。主張することなく、春風のごとく耳に触れる感じだと嬉しい。

あとは、色彩の変化や荒々しい自然の表現はどうでしょう。色の豊かさであれば、正直電子ディスプレイは印刷物にまだまだ敵いません。一方で、基本的に印刷物である絵本は、絵画にみられるマチエール(絵肌)やアンパートマン(絵の具の盛上り)のような、観る角度や距離、光の当たり具合による表情の変化の面白さがありません。デジタル絵本にだってそれは難しいけれど、動的な色の移り変わりや複雑な色の混合の美しさという形で、デジタル絵本の魅力は出せるのではないでしょうか?

また、車軸を流すような雨や雷鳴、稲妻、大時化なんかは、音、色、動きのダイナミックな集まり。複合的な迫力を出せる、という点ではデジタル絵本は面白いな、と。揺れや震えを巧みに出すのは難しいですが。
そういったものは、絵本のメインストリームではない気もしますが、普通の絵本と同じものだけを表現してても特長がないわけで。
もっとも激しい画面の動きは、長時間だと子供に良くないから程々に。

いつか、デジタル絵本だから感動を生む物語、デジタル絵本でなければ描けなかった作品がたくさん現れるといいですね。