『おふろやさん』

作・絵: 西村 繁男
出版社: 福音館書店

私事で恐縮ですが、銭湯が基本的に好きです。別に裸の付き合いとか、近所同士のコミュニケーションとか、そういう濃密なものを得意とするわけではないのですが、何と言うか、あの解放感です。そして、脱衣場に流れるゆったりとした静けさのある雰囲気。この雰囲気はいわゆるスーパー銭湯では出ません。脱衣場は狭く混雑し、休む場所は別にあるからです。脱衣場が休憩所を兼ねている銭湯だからこそなのです。

私sonsonは、振り返ると小学生からは自宅に風呂がありましたが、それまでの銭湯時代が記憶に染み付いているせいか、ちょくちょくと銭湯に行きました。サウナで年を越したこともあったり、旅先で地元の小さな銭湯に飛び込んだり……。今でも好きな娯楽の一つです。

前置きが長くなりましたが、この絵本はまんま、銭湯の、お風呂屋さんの絵本です。入るところから出るところまで、じっくりと描かれています。銭湯の風格は、昔ながらの大きな屋根のある、立派なものです。

俯瞰的な描写が多く、たくさんの人が出てきますが、優しい筆致なのでごちゃごちゃして見にくいわけではなく、いろんなところでいろんなことをしている様が面白いですね。子供がはしゃぎ過ぎて怒られるシーンがありますが、自分に照らし合わせて懐かしいです。
それに、入浴料140円の掲示、敷き詰めるように並べて掲示されている近所の店の広告、針のブルブルと動く体重計……見てるだけで楽しいです。そして、浴槽の周りには段がありません。関東系です。壁を見るとペンキ絵。タイル絵ではないです。これも関東系ですね。

銭湯が無くなりつつある中、いずれは昭和時代の生活文化を描いた歴史絵本になるのかもしれません。今まで銭湯に行ったことがないと言う大人は、この絵本を読んだことをきっかけにして、一度銭湯に行ってもらいたいです。銭湯の過ごし方もこの絵本からざっと学べますし、ね。

番外編で扱うには、少々名作絵本過ぎたかな。