『どうぶつどどいつドーナッツ』

作: もとした いづみ
絵: たごもり のりこ
出版社: 鈴木出版

何かないか何かないかと、tantanの部屋にある絵本のジャングルに足を踏み入れてみました……。そこでひょっこり出てきたのが、都々逸(どどいつ)絵本。

都々逸。俳句や短歌に親しんだ人でも、あまり馴染みのないものなのではないかと思います。七・七・七・五の字数は普通に読めば、音の流れが少し綺麗に出ない感じがあります。短歌の五・七・五・七・七は、上の句と下の句に分かれていて、上では長短繰り返し、下では同じ文字数の繰り返しになり、調子が出やすい。それに比べ、都々逸は最後だけ五文字なので、どうも尻すぼみ感を感じてしまうわけです。テンポに慣れていないだけかもしれないですが、三味線が伴奏に付いて初めて真価を発揮するものに思えてならないのです。

まあ、それはそれ。絵本になっていることがまずすごい。一から十までを数えながら、頭韻まで踏んでいます。いろんな動物が次から次へと出てくるし、画風も柔らかく親しみやすいです。特に狸の絵が愛嬌あって一番好きですね。ゴリラも良い顔してますねえ。
で、いわゆる尻すぼみの五文字なのですが、結びを全て「おいしいな」と統一してあるので、オチのような感じが出て全体としてまとまっています。ただ……都々逸としては少しひねり不足でしょうか。元々、お座敷芸のようなものですから、男女の情を粋に表現するというほうがやはり向きます。絵本の雰囲気は都々逸というより、何というか大喜利のよう。

都々逸本来の調子で唄うと良いのかもしれませんが、テンポがゆっくり過ぎるので果たして子どもが楽しめるかな……??
などと、いささか不安な要素もあったりする絵本ではありますが、子どもの広い広い感受性を刺激するために、こういう絵本も面白いかもしれません。