プールの季節だ。長女monmonはプールが大好きだ。夏になるとプールプールとかまびすしいし、冬でも温水プールに行こうという。にしても、冬に生暖かい温水に浸かっていると体の感覚がついていかず、どうも奇妙な気分になる。
プールが好きと言っても、真剣に泳ぐというより(というかまだまともには泳げない)流水プールやすべり台、スライダーなどが目当てだ。確かにそれらはすこぶる楽しい。が、まだ彼女は本格的なジャンボスライダー系には身長的に乗れない。そのジレンマにいつも身悶えている。
父としてはそんな人工的なものだけに目を向けず、大自然たる海にもチャレンジして欲しくはある。あるにはあるが、海水浴場へは準備と移動が大変で、砂浜はどこまでも熱く、少し沖へ出ると途端に深くなり、たまにはクラゲも現れる。洗い落とすのだって大変だ。正直、親としてはとても気が休まるとは思えない。
まあ、そもそも海水が鼻に入ったり飲んだりした時点で泣きべそをかかれ、もう海なんて嫌だー、海のバカヤローと言われてしまいそうだが。

そう、海は塩辛い。人間の体にとって大切な塩が大量に含まれているからだ。また時に塩は大地においても巨大な岩塩となって出現する。人が母なる海、母なる大地と呼ぶのならば、塩は父、父なる塩に相違ない。だから、おもちゃを買ってとねだられようとも、ディズニーランドに行きたいとせがまれようとも、いつも父は塩対応。

さて、父が偉大かどうかはわからないが、少なくとも塩は実に偉大だ。だとすれば偉人伝がいろいろと絵本になるくらいなのだから、きっと塩だって絵本になっているだろう。それで調べてみたら『塩の絵本(作:たかなしひろき、絵:さわだ としき、出版社: 農山漁村文化協会)』というのがあった。それはうれしいのだが、個人的にはちょっと違和感がある。塩の歴史や役割、作り方が細かく説明されている。しかし、塩の謎に深く迫りたいわけじゃない。言うなれば、ソルト氏の愉快で楽しい冒険活劇とか、心が甘くなるようなしょっぱい物語を読みたい。この世にないのなら、いつか自分で作るべきかもしれない。もっとも、ニーズもなさそうだが……。

そんなわけかこんなわけか知らないが、我が子らは塩が好きだ。どうやら母の塩好きが遺伝したらしい。時にやたらと舐め、時に大量にこぼして家の中で盛り塩をしてくれる。高価な塩ほどこぼしよる。
販売している塩の種類はたくさんあれど、安価で少量ずつを手に入れるのは実は結構難しい。専門店もとても少ないし、ネット販売の送料はいささか高い。だから、クラフトビールが流行ったみたいに、大クラフトソルト時代が来てくれることを私は祈っている。
ああ藻塩よ、永遠なれ。

潮風が目に染みる……