『100万回生きたねこ』

作・絵: 佐野 洋子
出版社: 講談社

変な話だ。変と言うのは、絵本の内容のことではなく、猫のこと。
古来、化け猫なんて云われ、どちらかというと寿命の知れない生き物みたいに見られてたのに、今度は100万回も生死を繰り返す生き物になっている。
そういう不可思議さが、猫にはついて回るのだろう。なつくようでなつかない、孤独なようで孤独でない、猫のもつ二面性。輪廻転生するような、永遠に世界を旅する不死の者のような。

もしも100万回の猫生をホントに描いたら、全百巻でも足りないかもしれないけれど、その中のほんの少しの猫生を垣間見てみよう。周りのことが嫌いで、自分だけが大好きな猫が、一体どこへ向かうのか。
キュートな絵でもなく、ポップな絵でもない気がするのだけれど、どこかほっとする絵で嬉しくなる。が、果たして、子供が気に入って飽きずに読んでくれるかしら?
ちょっと不安……。
でも、子供が少し大きくなって、あるいは大きくなりすぎて大人になってしまってからでも読んでみて欲しいと思っている。
たった一回の人生を存分に堪能して欲しいからね。何かを嫌って生きたって楽しくなんかないからね。

100万回生きたねこ (佐野洋子の絵本 (1))