毎度青猫の話で大変恐縮だが、未来からやって来た最初の時にモチを初めて食べて、とても気に入るシーンがある。しかしだ、もし22世紀にモチ文化が廃れていたのだとすると、それはもの凄く怖い。モチのない世界。まあ、たまたまモチを食べたことがなかったとも解釈できるが、歴史から文化から博覧強記の高度人工知能内蔵自律型機械がモチを知らない。それはあり得ない。もしもそうなら、22世紀にはきっと煎餅もないんだと思う。則巻千兵衛がもはやギャグにもならない世界、そんな暗澹たる未来。

和菓子系にはちょっとそういう衰退の匂いがある。ほんの微かな。その点、洋菓子は今も繁栄し続けているようにも思う。洋菓子って、ちょっと大雑把にくくり過ぎな気もするが……。今や、タルトって何ぞや?などと訊く人はまずいない。私もそうだ。そうだが……実はもんやりとしか分かってない。何語なのかすら知らない。そんな私がタルトを作る日が来るとは思っていなかったし、そして唐突としてそれはやってきた。

大体ウインナー作りのつもりだったのだが、タルトになった。まあ、次女rinrinとすれば、そちらを選ぶのも仕方ない。若干7歳で嬉々として腸に挽肉を詰めていく姿もいささかあれなわけだし。
持参すべき保冷袋もエプロンももたず、近所の散歩の帰りかという雰囲気を醸し出す父娘で、お菓子作りは始まった。しかし、本格お菓子教室というわけではないので、それほど難儀はせずだった。いやもちろん娘の方がやや上手だったが……。
ちょっと余裕出して周りを見回すと、参加者はいろいろだった。意外と母娘ペアは少ない。大家族もあり、男性も割と多い。そういう時代なのか、あるいはタルトの魅力の成せる故なのか。が、恐らくうちのチームの方がむしろ少し触れ難い雰囲気だったに違いない。準備皆無の父娘、どうにも慣れない手つきの父、やけに喜ぶ娘。これは訳アリなのか。いや、スパイなファミリー的にでも思われてたらいいんだが、残念ながら父が全く冴えてはいない。
なお、我々がタルトと格闘している間、長女monmonは園の中にある池のいかだに乗りたいと苛烈に要求していたらしい。まあ、他にも乗りたがる人は大勢いたみたいだが。多分、我々には海洋民族の血が残っていて、そうさせるのだろう。知らんけど。

で、シャインマスカットをふんだんにあしらったタルトは無事完成し、あっという間に食したのだが、そしてそれとは全く無関係に絵本のこと。ダイニングテーブルにそっと置かれていた『お父さんはウルトラマン(作・絵:みやにし たつや、出版社:Gakken)』。いや、うーん、その仕事は結構辛い。労働時間短そうだけど。そして、私はどちらかというとバルタン星人派なんだが……。私が今回注目したのは『バケミちゃん(作:おくはら ゆめ、出版社:講談社)』。関西弁が身に沁みる。色彩も目に染みる。なので、白いバケミちゃんがほっとする。

てんこもり