春の風には妙なところがある。
穏やかな気持ちで春を迎える時、風はまるで体の中を通り抜ける。
そしてそこかしこに満ち満ちる光が、息吹が、内側からも溢れ出てくる気がして、自分が世界の一部であるとさえ実感できる。
でも不安な気持ちで春を迎える時は、風は体の周りを柔らかくすり抜けていく。
体と周辺の空気の間に極薄い膜があって、風はそれを通れないかのように。
その時、余りにも平穏な世界から、自分だけが隔絶されているような気分になる。

まあ、今回、桜はいささか咲き急いだけれど、春自体はのんびりとやってきた。久方ぶりの夜桜見物と洒落込んだ。
さて、我が子らも春になると新しい芽吹きをするらしい。長女monmonは、百人一首の覚えやすかった歌を連呼しながら、新学年のクラス替えに戦々恐々していた。確かに今後一年を占う采配にただ我が身を委ねる理不尽さは痛いほど分かるが……。悩むのはもう少し恋心が芽生えてからでもいいんではないかと思う。と思っていたら、同じクラスになった見知った5人ほどはイケてるメンバーらしいて、途端に安心していた。
対して次女rinrinは、選挙カーのウグイス嬢の連呼を歌い上げながら、コマなし自転車の練習に勤しんでいた。自転車に乗りたいのは、いささかアニメ映画の影響を受けているような気がする。凝り性なので猛練習してあっという間に乗れるようになるかもしれない。と思っていたら、手伝いもしないうちにあっという間に乗れていた。ザクに乗ったアムロみたい。
が、惜しむらくは周りには坂道が多い。自転車があっても全然行動範囲が広がらない。というか、むしろ面倒臭くて歩く方がある意味楽だ。自分が子供の頃は、あらゆるところに自転車で行ったものだが……平地だったし。しかしまあ、乗れるようになればレンタサイクルとかナントカサイクルスポーツセンターとかでも皆で遊べるようになるので、それはそれで良い。

そんな姿を横目に私はクロスバイクを復活させて、ちょいといろんなところに行こうと企んでいる(だが、一人でサイクリングに出かけるのは皆に阻止されるだろう)。だが、ヘルメットはまだない。またマスクのように時代の要請に応じて、もっと多彩なヘルメットがこの先出てくるのかもしれない。

さて、monmonには既に絵本は眼中になく、今は『人狼サバイバル』なる児童向け文庫に凝っている。個人的には、もう少しほんわかしたものを読んで欲しいが……。一方で、rinrinは図書館から『おえかきしりとり(作:新井 洋行、鈴木 のりたけ、高畠 那生、よしながこうたく、出版社:講談社) 』を借りてきた。絵柄に少々(大分)ねっとり感を感じるが、まあそこは子供の感受性には全くもってOKなのかもしれない。んん、温かく見守ろう。

近所なので夜桜は3本だけ。