サイバー空間に囚われた魂たちが無意識に織り成す現代社会の見えない蜘蛛の糸。捏造された虚像が逆に現実(リアル)を変容させていく。その中でただ息を潜める少女の、運命の歯車が鈍い軋みを上げ始める……。
とまあ、何だか分かったような分からんような内容の小説に書かれていそうなタイトル『滑る肉球』。しかしこれは単なる我が家の犬っころのことである。騒ぎまくるくせに大のビビりという、人間社会では必ずどこかで躓きそうな性格の持ち主。油断しているところに、こちらが少し妙な動きを見せたら、フローリングでとことん滑って逃げていく。割と滑らないようなマットを敷いてあるのに、わざわざフローリングの方で滑っていく。昔の漫画でめちゃくちゃドリフトしている車みたいだ。まあ、すごいとは思う。幾ら滑ってもコケないのだから。私なら一回目の滑ったところで顔面からコケる自信はある。
それにしても、肉球はあんなにザラザラしてるのに、何故にあんなに滑るんだろうか。やっぱり接触面積小さいのかな。まだまだ肉球に進化の余地はありそうだ。

そんな毎日なのだが突然、昔夢はあったかと長女monmonに尋ねられる。ヒジョーに難しい。何もかも朧げだ。偉大な発明家、だった気もする。何か分からんがすごい発明する奴だ。絵描きや役者や作家だったこともちらっとはあるような。もっともその頃には『滑る肉球』なんてタイトルの絵や芝居や小説は考えもしなかっただろうけど。
きっと何になろうか、なりたいか彼女は悩みつつあるのだろう。医者とかも言っているが、自分の娘が医者なんて想像もつかない。白い巨塔よりも町医者向きだとは思うが……。
うどん好きな次女rinrinなら、うどん美食家なんかいいかもしれない。仕事になるかどうか分からないが、SNS全盛の最中、うどんに特化してもいけるんじゃなかろうか。いや、そこまでうどんラヴでもないか……。

何になるにも勉強なわけで、monmonは塾に行きたいという。まあ、松下村塾や適塾の例もある。ただただ受験勉強と受け取るのもよろしくない。とりあえず夏期講習から始めた。どうでもいいが『カキコウシュウ』と聞くとどこか中国名に感じる。ほんと、どうでもいい。

さて、絵本はとなるとあまりこれというのがないけれど、rinrinに読み聞かせろと言われたのが『さんまいのおふだ(文:もきかずこ、絵:若菜 珪、出版社:フレーベル館)』。ちょっと渋い。そして何だろ、お札の力が割とショボい。それゆえにスリリングな展開になって面白いのだが。いや、小僧さんの使い方が悪い気もする。この絵本の教訓とするところは、宝の持ち腐れ、なのかもしれない。

画像生成AI「Midjourney」で作った少女と犬。おどろおどろしくなったので少し彩度を落としてみたものの……