昔の夜店の釣りといえば、ひよこ釣りにカメ釣り、そしてサメ釣りだった。と言っても、住む場所により出現する夜店の種類に偏りはあると思うのだけれど。
まあ、(おそらく)動物愛護の観点からひよこ釣りはほどなく消えてしまった。釣りではなくすくいだったかもしれないがどちらにしても消えた。しかし、見事に親鳥まで育ったという話を聞いたような気がするし、そうでもない気もする。
カメ釣りも動物愛護でなくなったのだろうか、とんと見なくなった。カメに対しては、比較的人は冷たいようにも思えるのだが、あるいは浦島太郎の時代からカメにはトモダチ感があるのかもしれない。
ちなみに勿論、サメ釣りは本物ではない。ゴム製のサメの口の中に鉄のピースがあって、マグネットが先端に付いた竿で釣り上げるというような。さらに口の奥に数字の書いた紙があり、くじ当てになっていたように記憶している。

一方、すくいの殿堂といえばやはり金魚すくいだ。すくえなくても三匹もち帰られるがメジャーだが、こじんまりとした祭りではすくった分だけくれたりもする。その方がすくう甲斐があるとは思う。無論、飼うのは無理という家庭ではすくいだけを楽しんでもって帰りはしないだろう。
しかし、もって帰っても……と思ってはいても、小さな袋に入った金魚を手渡された時の高揚感と、その金魚たちとの並々ならぬ縁を感じてしまうともう駄目。かくして今年の夏も金魚が家にやってきて、生存させるべくの格闘が始まるのだ。

思い起こせば去年は長女monmonがアスファルトに金魚をぶちまけるという失態を犯し、かなりの方々が致命的なダメージを受けられた。果たして今年はというと、荷車と化したベビーカーに袋を引っ掛けていたのだが、隙きを突いて次女rinrinが袋の上から金魚をぎゅぎゅっと握るという暴挙に。2年連続でヘビーな事態だ。
偉大なる金魚の神には日々懺悔をしている。

ちょうど、めだかの水鉢が暗黒の泥水と化しており、復旧のため別の水槽へ引越中であった。そこに、突然の金魚軍団の来訪である。仕方がないのでめだかの臨時水槽にぶちこむことにしたが、金魚たちの元気復活にはまだまだ時間がかかりそうだ。その間に毎日毎日脱落者が出る。もらった時の高揚感とは裏腹に、この期間が一番苦しく、悲哀だ。およげたいやきくんを口ずさまずにはいられないほどだ。

ふと、絵本の『きんぎょがにげた』(作: 五味 太郎、出版社: 福音館書店)を思い出す。逃げただけならずっとずっといいよ。

二週間が過ぎて、ほぼほぼ生き残りは固まったが、生存率はとてもここでは言えない……。

愛しき生存者