歯を磨かせるとはこんなに困難なものかと感じる日々だ。と言っても、単身赴任かつ私の手には負えずにパートナーに歯磨きを任せっきりな私が言うことではないが。我が家の長女monmonは全くもって歯磨きが嫌いで、そら他人に口腔内をゴリゴリやられるのはどう考えても鬱陶しいに違いないのだが、それなら自分で積極的にすればいいのに、それもまた面倒くさいわけで。
まあ、虫歯と歯医者の恐怖をまだまだ理解していないからどうしようもないとも思う。それは言いながら、自分自身の口を開くと、物凄く治療の跡が一杯で。どの口が娘に説教しているんだか……。今見ると、歯を大切にしなかったという後悔よりも、治療費すごく勿体なかったな、という気持ちのほうが強い。これが、親になった証拠かとしみじみと感慨に耽る。耽ってどうする。

そんなmonmonは何故か歯に関する絵本が割と好きだ。幼稚園で散々言われているせいかもしれないが、何だかよくわからない。この間ももってきたのが『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ(作・絵: 五味 太郎、出版社: 偕成社)』だ。ワニだけに歯を見るのも一苦労だ。ワニだって歯医者さんは怖い。歯医者さんとワニの発言がシンクロしていて、五味さんの親近感溢れる絵と合わせて、面白い絵本だ。

こんな絵本を読んでいるうち、想定外にも私が歯痛で歯医者に行く羽目になった。ワニじゃないが、ある意味心の中で割とどきっとしていた。初診のところだと尚更だ。大人になるといろんな原因で歯痛とかになるらしい。まあ、歯磨きの不十分さも十分あるのだが……。

ワニって、日本ではあまり恐怖の対象になり切れてないような気がする。身近にいるわけじゃないからだろう。もし、そこらの庭やゴルフ場でしょっちゅう出てきてたら、こうフレンドリーなキャラでもないと思う。もっとも、虎だって狼だって大蛇だって、絵本では随分とコミカルに描かれているから、どうだかわからないけれど。

何とか絵本生活を続けている長女monmonを尻目に、次女rinrinは自由気ままに成長している。絵本のページをぐしゃぐしゃに握りつぶすことが少なくなって安心の日々だが、時折破りはするので仕掛け絵本については正直気が気でない。
しかしこの頃この子を見ているとふとアランの「幸福論」にある言葉を思い出す。

幼い子供がはじめて笑う時、その笑いはまったくなにも表わしていない。幸福だから笑うのではない。むしろ、笑うから幸福なのだとわたしは言いたい

初めて笑うという時からは長くが過ぎ去り、彼女は今、実に笑い倒している。きっともう、純粋に楽しいから笑っているだけだろう。けれど、なるほど、我が子らが笑うから私たちは幸せなのだ。私たちが笑うから、彼女らは幸せなのだ。私も笑おう。両肩に重く圧し掛かった仕事というどす黒い闇など、酔っぱらった帰り道の月夜に霧散させ。

VR_hamigaki
決して磨きませぬ(VRゴーグルによる抵抗)