ザ・スマートボーラー
ザ・スマートボーラー

夏なので幾つかの祭りや花火大会に出かけています。思うのは、昔よりも露店が随分と減ったな、と。勿論、大きなイベントにはたくさんの露店が出ています。しかし、少し規模が小さなものになると途端に数が減るように思えます。少子高齢化や不況、その他諸々の事情があるのでしょう。でも、やはりいささか寂しい。
また、大きな祭事にはたくさんの人が集まるので、露店の行列も一杯。目的は似るものなのか、何か質の違いがあるのか、雰囲気なのか、特定の店に人が集中します。焼きとうもろこし一つ買うのも一苦労。楽しめません。かたや、小さなところは店が少ない上に閑散。そうなると、当て物やすくい物をするにも盛り上がらない。金魚すくいをしていても、隣はあれくらいすくってる、あらら破れよった、向こうから金魚が避難してきたからすくいやすくなったとか、そういうのがない。独りですくっていたら、周りに金魚がいなくなって沈黙さえ漂うことがあります。これもまた楽しめず。活気が有り過ぎても無さ過ぎても不満が募る。いわゆる『露店のジレンマ』……。

パートナーtantanと我が子monmonが、私とちょっと別行動で祭りの夜店に行っていた時、monmonが「お面が欲しい」とねだったそうです。しかし、価格が1,000円で、tantanには高くて買えませんでした。それを聞いて、ふーん、お面か、と。私は正直、お面に昔から興味がありません。おもちゃの武器なら振り回して好き勝手に楽しめます。ですが、お面は被っている本人には何のこっちゃわかりません。見えないんですから。被っている様を人に見せて、リアクションをもらってやっと楽しめる。面倒くさいったらありゃしません。
それに加えて、例えばドラえもんのお面。ドラえもん自体はとても好きです。ロボ顔なんでお面のフォルムもしっくりきます。でも、ドラえもんというのは、傍にいて頼もしいロボットであり、友達なんです。別に自分がなりたいわけではない。ちょうど、男の子がカブトムシを欲しいけれどもカブトムシになりたいわけではないのと同じです。それだと、ザムザの如く苦悩しなくちゃならない。大体、扁平なお面はいかにも着け心地が悪そうで……。そんなこんなで、私としてはお面にはさっぱり興味が湧かないのです。
そう言いながら、子供にお面をねだられるというシチュエーションには、何かしらの憧憬を感じられずにはいられない。意味もなく穏やかな光景が浮かんできます。しかし、やはり私にも高くてとても買えません。買ってやりたい気持ちはあるけれど懐としては買ってやれない、いわゆる『お面のジレンマ』であります。

結局、その時は500円でピカピカ光る変身用スティックを買ってもらうことで落ち着きました。もっともmonmonは変身する気はさらさらなく、スティックを人に向けて「バンッ」を連発していました。それ、ライフルやん……。
そして、今や収納の奥底に眠り忘れ去られています。まさに夜店は、夏の夜の夢。