2015年たこ舟の旅
2015年たこ舟の旅

子供の頃、鯖の美味さがよくわからなかった。鯖の塩焼き。もふもふするだけというか。脂があまり乗っていない時季の鯖で、余計にそう感じてしまっていたのかもしれない。いや、あの頃、大根おろしと旨い醤油があれば、きっと美味しくいただいていたろう。貧乏だったのか、自分に味の調整という発想がなかったのか、大根おろしと醤油は大人のシーズニングだったのか、そういう食べ方をした記憶がない。とにかく、鯖はもふもふ。

で、我が家のmonmonである。目下絶賛好き嫌い中だ。お菓子とフルーツはこよなく愛しても、晩御飯はノーサンキュー。沢庵と梅干とふりかけは強く望んでも、かったるそうに牛肉を食う(滅多に牛肉出ないけど……)。キィィ。魚は肉よりももう少し食べてくれる。混ぜご飯のようにしたほうが味も濃くなって良いのかもしれない。

そのmonmonは屋台物やファストフードならガツガツ食べる。フライドポテトは近頃のお気に入り。たくさんは食べんで欲しいのだが……。そして、遺伝子にでも組み込まれているのだろうか、隔世遺伝しているのか、たこ焼きも大好きだ。昨今のたこ焼きは高いのでいささか困るのだが、おやつの代わりによく買ったりする。
だがしかし、中身のたこを頑として食べようとはしない。チャレンジを促しても一向に耳すら傾けない。西洋人の遺伝子でもどこかに組み込まれているのだろうか。いや、何でも遺伝子のせいにするのは止めよう。我々は遺伝子の方舟ではない。多分、前世で蛸壺に閉じ込められたかしたのだろう。多分そうだ。

たこ焼きからたこを抜いたら、ただの焼きでしかない。小麦粉の焼いたやつだ。まあ、どれも大概そうだが……。特に関係ないが、笑福亭鶴光さんのマクラに「ほな、鉄板焼に鉄板入ってまっか?」というのがあった。日本語は実に多様だ。

そんなわけで、たこ焼き屋が見たら泣き崩れそうなくらい、たこ焼きを解体し、たこを切除し、外側だけを食べている。私はたこだけ。
たこ焼きにこんな調子では、いか焼きの美味さに目覚めるのはいつになることやら。幾分、彼女の成長が心配な毎日だ。