『小学館あーとぶっく7・シャガールの絵本』

出版社: 小学館
構成・文: 結城昌子

番外編にふさわしい内容かな、と思います。何故なら、おすすめすべきものなのかどうか、非常に微妙に感じているから。

この絵本はシャガールの幾つもの絵に対して、文章を作り合わせてストーリー付けをしたものです。とは言っても、見開きの右ページに一枚の絵を、左ページに文章を載せたものなので、ストーリーとしては大変短いです。緑色の顔のバイオリン弾きが街にやってきた……とか、首が伸びちゃった……とか。絵の一部が切り貼りして文章の隙間に散りばめられていて、華やかな感じになってます。
小学館あーとぶっくシリーズでは、シャガールの他にもゴーギャンやマティス、モネなどいろいろな画家の絵画を絵本化したものがあります。

それで。シャガールの絵が一番ファンタジックで絵本らしくなるかな、と思っていたのですが、ページをめくるごとに(絵が変わるごとに)ストーリーが切れているので、ページを開いていく楽しみが大きく減ってしまっています。そして、絵画は絵の大きさ、絵の具の質、混ざり方、作り方、光の散乱・反射、画家の思いなどが一体となっているものですが、それが非常に伝わってこないんです。それは画集でも同じなのですが、画集では本物を見た上で、という前提があります。

名画にストーリーを当てる、というやり方は面白いなぁ、と思ったのですが、どうせなら名画を完全分解して、一冊で一貫した物語としたほうが楽しめるのかもしれません(そういうものが許されれば、ですが)。

と、このようなことを言いながらも、おすすめ絵本(番外編)として挙げさせてもらったのは、普通の絵本とは全く毛色の異なる「絵」であるので、「世の中にはこんな絵もあるんだな~」という気持ちを子どもに少しでももってもらえる可能性だってあるということ、「絵画」と「絵本」の存在性の違いを大人は考えさせられるかな、ということからです。

本物の名画は、もっともっと生きいきとしています。シャガールの青はもっともっと深みをもっています。額縁だって表情豊か。絵本を足掛かりとして、いつか名画と出会うようになってくれたら、素敵ですね。

シャガールの絵本―空にふわり (小学館あーとぶっく)